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注染

大和撫子を美しく装うゆかた

現在流通する多くのゆかたは機械で染められているが、竺仙は今も尚、職人の手によって染めている。それが江戸の人々が愛した感性、”粋”につながる。今回は、創業98年の注染工場の伊勢保染工所を訪ねた。創業当時から竺仙のゆかたを染めてきた染工所。東京近郊で数件となった注染工場のひとつで、現在では手拭い専門の注染工場がほとんどの中で大変貴重な浴衣染工所である。反物の柄部分に染料を注いで染める注染は、明治時代の後半に大阪で始まった染色技法で、単色の染めは勿論のこと2色以上使うカラフルな色使いで染めることが出来るのも、注染染めの大きな特徴。「職人が技術と知恵を絞り、ひと手間加える。だから竺仙の商品になる。」と伊勢保4代目当主は語る。地染め、糊付け、染め、水洗い、天日干し、といった工程を経て商品となる。同社では各パートに専門の職人を配し分業で竺仙が求める粋のデザインを表現していく。こうした職人の世界は後継者問題がたびたびクローズアップされるなかで取材当日、女性を含めた20代〜30代の若手職人が仕事に打ち込む姿を多く拝見した。「美術系の学校を出た人もいて、物づくりをしたい、和の物や染色に興味があるといった動機でこの世界に飛び込んでくる人も少なくない」と言う。インターネットが普及し情報はwebで簡単に検索出来る。こうした若い職人達は、情報化時代の象徴でもある。注染は世界でも日本にしかない独特な染色技法。「注染にこだわり、後世に残していきたい。その為にも次世代の職人を育てていきたい」と展望を語るまなざしに伝統、そして今を超えて行くパワーと自然に伝わる温かみを感じる。染料の染み込んだ手は長年紡いできた仕事の証しでもある。そこで働く人と場所は初めて経験する素敵な空間であった。
【取材協力】伊勢保染工所 / 東京都江戸川区

伝統技法 "注染" の工程

  • 「伊勢保染工所」

    伊勢保染工所は手拭いだけでなく、浴衣も染める注染の染工所として現在では大変貴重な存在。
  • 「型付け①」

    ヘラを使って防染糊を置く。海草から作られた糊をつけることで、色が入らない部分を防染する。
  • 「型付け②」

    柄がぴったりと合うように生地を折り返す。生地の折り返しには相当の技術を要する。
  • 「そそぎ染め」

    糊付けで囲われた内側に染料を注いで反物を染め上げていく。染料を注いで染めていくことから”注染”と呼ばれる。色の濃淡も染める染料の具合を見ながら色を差していく。素人目にはこの段階でどのような絵柄になるのかよく分からないが、職人は完成系を見極めて色を注ぎ染めていく。
  • 「染め上がり」

    この段階でようやく柄が見えて来る。写真の商品は竺仙の「朝顔に秋草の柄」。

動画「染め」

実際の職人の手仕事風景。
職人の一瞬のタイミングにより世界で1枚の風合いを持つ浴衣に染められます。

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